キンチャクダイは多くの種類がインド洋~太平洋の熱帯・亜熱帯域に分布しており、派手な見た目をした種類が多く観賞魚として飼育されることも多いです。
基本的には国内で見られる種類は〇〇キンチャクダイ、○○ヤッコという名前で呼ばれ、国外で見られる種類は○○エンゼルフィッシュと呼ばれています。(一部例外はあり。)
目次
キンチャクダイ科(Pomacanthidae)について
キンチャクダイ科は西部太平洋の熱帯・亜熱帯域に多くの種類が分布している科で、水深の浅い場所で多く見られます。
キンチャクダイ科は8属91種類から構成されており、日本では約30種類が生息しています。
チョウチョウウオ科に似ていますが、チョウチョウウオ科に見られない前鰓蓋骨に鋭い棘があり、チョウチョウウオ科に見られる腹鰭の付け根の棘と浮袋の突起がありません。

上の魚はタテジマキンチャクダイです。
美しい見た目をした種類が多く、日本国内でも観賞魚として人気の高いグループです。(一部の大型種は食用としても利用されています。)
キンチャクダイ科の最大種だと考えられているグレイエンゼルフィッシュは最大60cm以上に成長します。
アブラヤッコ属(Centropyge)
アブラヤッコ属は約35種類が分類されており、キンチャクダイ科の中で最も大きなグループです。
体長15cm程度の小型種が多く、強いオスが複数のメスを従えるハーレムを形成する事で知られています。
雌雄同体で、群れの中で力を付けた個体がメス⇒オスへと性転換を行います。
キンチャクダイ属(Chaetodontoplus)
キンチャクダイ属は15種類が分類されており、日本国内には「キンチャクダイ」、「チリメンヤッコ」の2種類のみが生息しています。
以前はアカネキンチャクダイという種類も国内で見られましたが、赤ねキンチャクダイはキンチャクダイとキヘリキンチャクダイの交雑種であることが分かりました。
インド洋~太平洋の熱帯域・亜熱帯域に多くの種類が分布しています。
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キンチャクダイは他の多くのキンチャクダイ属とは異なり、温帯に適応した種類で、国内では相模湾以南で見る事ができます。
チリメンヤッコは観賞魚として飼育されることもあります。
サザナミヤッコ属(Pomacanthus)
サザナミヤッコ属はインド洋~太平洋の熱帯域・亜熱帯域を中心に13種類が確認されており、国内では5種類が確認されています。(稀にセダカヤッコが迷い込んだ物が見られる事もあります。)
キンチャクダイ科の中でも大型種が多く分類されており、セダカヤッコやグレイエンゼルフィッシュのように50cm以上に成長する種類もいます。
サザナミヤッコ属は幼魚と成魚で模様が大きく変化する事で知られており、別種のように見た目が大きく変化します。
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大型に成長する種類が多いですが、幼魚の見た目が美しい事もあり小さな個体を中心に観賞魚として流通することがあります。
沖縄ではサザナミヤッコ等を食用として利用しています。
サザナミヤッコ属ではタテジマキンチャクダイとサザナミヤッコがJAZA加入の施設のうち20ヵ所以上で展示されています。
キンチャクダイ科の最大種であるグレイエンゼルフィッシュは葛西臨海水族園でのみ展示されています。
サザナミヤッコ属の幼魚・成魚の比較
サザナミヤッコ属は幼魚と成魚で見た目が大きく変化する事で知られており、水族館でも幼魚と成魚を比較するような展示もあります。


上の写真はタテジマキンチャクダイで、左側は幼魚、右側が成魚です。
上の写真はタテジマキンチャクダイですが、幼魚は青黒い体色に白色の模様があります。


上の写真はサザナミヤッコで、左側が幼魚、右側が成魚です。
サザナミヤッコ属の幼魚は上のように青色と黒色の体色に白色の渦巻模様があります。(種類によって幼魚時代の模様が微妙に異なります)
サザナミヤッコはこの幼魚時期の模様がさざ波に見えた事が由来となっています。

上の写真はサザナミヤッコの若魚です。
若魚は上のように幼魚と成魚の中間の見た目をしており、幼魚時代のさざ波模様が少し残っています。
シテンヤッコ属(Apolemichthys)
シテンヤッコはインド洋~太平洋の熱帯・亜熱帯域に8種類が分布しており、日本では「シテンヤッコ」1種のみが生息しています。
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シテンヤッコは体長30cm程度にまで成長し、シテンヤッコ属の中でも大型に成長する種類です。
シテンヤッコは黄色の体色に青色の吻先が特徴的で、観賞魚として飼育されることもあります。
シマヤッコ属(Paracentropyge)
シマヤッコ属は2種類で構成されており、そのうちスミレヤッコは日本国内でも見ることができます。(スミレヤッコをアブラヤッコ属に分類する事もあります。)
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日本では見られない、もう1種類は「Paracentropyge multifasciata」という種類で、白色の体色に黒色の縞模様が特徴です。
タテジマヤッコ属(Genicanthus)
タテジマヤッコ属は他のキンチャクダイ科とは異なり性別により見た目が大きく異なり、力の強い個体がハーレムを形成することがあります。
インド洋~中部太平洋に10種類が分布しており、日本国内では5種類(無効分散と思われる種類も合わせると6種類)が確認されています。(日本国内で見られる種類のほとんどが小笠原諸島や琉球列島など南方に生息しています。)
属名の「Genicanthus」は「頬の棘」という意味で、キンチャクダイ科共通の特徴である前鰓蓋骨の棘が名前の由来となっているようです。
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タテジマキンチャクダイ属は小型種が多く、派手な見た目な魚が多い事から海外でも観賞魚として人気の高いグループです。


上の写真はトサヤッコで、左側がオスで右側がメスです。
他のキンチャクダイ科とは異なり、性的二型を示し、見た目で性別を判断することができます。
タテジマヤッコという種類がJAZA加入の施設のうち、9施設で展示されています。(ゼブラエンゼルフィッシュ、ヤイトヤッコ、トサヤッコ、ヒレナガヤッコなども国内の施設で展示されていますが、どの種類も1~3施設という限られた施設でのみ展示されています。)
ニシキヤッコ属(Pygoplites)
ニシキヤッコ属はニシキヤッコ(Pygoplites diacanthus)1種で構成されています。
ニシキヤッコは日本国内にも生息しており、八丈島以南で見られます。

強いオスが複数のメスを従え、ハーレムを形成すると言われています。
インド洋~西部太平洋まで幅広く生息しており、地域により色彩が異なる事で知られています。
上の個体はまだ小型の個体で、成魚になると白色の縞模様が明るいコバルトブルーで縁取られたような非常に綺麗な見た目になります。
綺麗な見た目から観賞魚としても人気のある魚です。
Holacanthus属
Holacanthus属はインド洋~太平洋、大西洋西部に8種類が分布しており、キンチャクダイ科の中では大型に成長する属です。
属名が和訳されていない事から分かるように、国内で見られる種類は存在しませんが、観賞魚として輸入される事があります。
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大型に成長する種類もいますが、優雅な見た目をしている種類が多く、観賞魚として人気のある魚も多いです。
日本に分布している種類はいませんが、国内の水族館で展示されている種類もおり、最も多くの施設で展示されている種類はクイーンエンゼルフィッシュで、JAZA加入の施設のうち5施設で展示されています。

上の写真はクイーンエンゼルフィッシュです。
クイーンエンゼルフィッシュは東部に王冠のような模様がある事が名前の由来となっています。
キンチャクダイ科を観察するのにオススメの施設
日本国内の水族館では合わせて、40種類以上のキンチャクダイ科の魚を見ることができます。
ここからは私が訪れた事のある水族館でキンチャクダイを観察するのにオススメの施設を紹介します。
葛西臨海水族園
葛西臨海水族園は20種類以上のキンチャクダイ科を展示しており、日本国内で展示されている種類のうち、約半分の種類を葛西臨海水族園で見ることができます。
葛西臨海水族園は非常にマイナーな種類を展示している事で有名な施設で、キンチャクダイ科の魚もレアな種類が展示されています。

上の写真はオールドウーマンエンゼルフィッシュです。
レンテンヤッコ、ゼブラエンゼルフィッシュ、トサヤッコ、グレイエンゼルフィッシュ、オールドウーマンエンゼルフィッシュの5種類は葛西臨海水族園でのみ展示されています。
上の写真は葛西臨海水族園のカリブ海水槽で、カリブ海に生息している国内ではほとんど展示されていない魚達を見ることができます。
この水槽ではキンチャクダイ科の魚が4種類が展示されており、フレンチエンゼルフィッシュ、グレイエンゼルフィッシュという大型種も展示されています。

東京湾の海エリアでは、小笠原諸島や伊豆七島など南方で見られるキンチャクダイ科の魚を多く展示しています。
紹介した水槽以外にも多くの世界中のキンチャクダイ科の魚を見ることができる水族館となっています。
鳥羽水族館
鳥羽水族館は飼育種数が日本一の施設で、キンチャクダイ科の魚も多く展示されています。
鳥羽水族館では約20種類のキンチャクダイ科の魚が飼育されています。

上の水槽はジュゴンが展示されている水槽で、この水槽ではアデヤッコ、イエローバンドエンゼルフィッシュ(セダカヤッコ)、サザナミヤッコが展示されていました。
ジュゴンを展示している施設は鳥羽水族館のみで、ジュゴンと一緒に泳ぐカラフルな魚達を見ることができます。

上のサンゴ礁を再現した水槽ではソメワケヤッコとワヌケヤッコを展示しています。
鳥羽水族館は大型の施設で、水槽数が非常に多い事もあり、様々な水槽でキンチャクダイ科の魚が展示されているのを見ることができます。
国内で最も多くの種類を展示している施設で、魚以外の展示も充実しているので1日でも楽しめる水族館となっています。
ここまで
最後までお読みいただきありがとうございます。