ニザダイ科(Acanthuridae)はスズキ目に分類されている科の1つで、80種類以上が登録されています。(執筆時は86?種)
美しい体色をしている魚も多いため、観賞魚として人気の高い魚も種類もいます。
国内では南日本側で多くの種類が見られ、食用としても利用されています。
目次
ニザダイ科(Acanthuridae)とは
ニザダイ科は執筆時点で80種類以上が分類されているグループで、スズキ目ニザダイ亜目の中では最大のグループとなっています。
ニザダイ亜目にはニザダイ科の他にマンジュウダイ科、アイゴ科などが属しています。
多くの種類は40cm以下くらいにまでしか成長しませんが、テングハギ属やクロハギ属は大きくなる種類がいます。
ニザダイ科の最大種はヒメテングハギ(Naso annulatus)で、1m以上に成長することがあります。(上の写真がヒメテングハギです。)
ニザダイ科はスズキ目ニザダイ亜目に分類されており、2亜科、6属から構成されています。
ニザダイ科の分類は以下のようになっています。
テングハギ亜科
テングハギ属
ニザダイ亜科
ニザダイ属 | ヒレナガハギ属 | ナンヨウハギ属 |
サザナミハギ属 | クロハギ属 |
これからは、それぞれの属について紹介していきます。
テングハギ属(Naso)について
テングハギ属はインド洋~太平洋の熱帯域で多くの種類が見られ、現在では20種類が確認されています。
このうち、日本で確認されているのは13種類となっており、水族館で展示されることも多いです。
上の写真はニザダイの尾柄部の拡大写真です。
尾柄部には骨質板が2対(ボウズギンポの仲間は1対)あり、主に藻類などを捕食しています。上の写真はニザダイの尾柄部の拡大写真です。
私が水族館で見た事がある種類を下で一覧にしています。(写真をクリックするとその種類のページにジャンプします。)
テングハギという名前が付けられており、由来は目の前方にある突起がテングの鼻のように見える事です。
しかし、テングハギの名前の由来になっている目の上に突起があるテングハギ科の種類は「テングハギ」、「ヒメテングハギ」、「ツマリテングハギ」、「オニテングハギ」の4種類のみです。
特にヒメテングハギは突起が長くなる種類で、テングハギ科の中でも最大種です。
上の写真はミヤコテングハギというテングハギ科の種類ですが、頭部に突起はありません。
クロハギ属(Acanthurus)について
クロハギ属はニザダイ科で最も多くの種類が分類されており、カラフルな見た目をした種類が多いです。
世界中で40種類が確認されており、国内では18種類が確認されています。
インド太平洋の熱帯域に多く生息しており、サンゴ礁で特に多く見られます。
上の写真はクロハギの尾柄部を拡大したものです。
背鰭はほとんどの種類で9条数で、尾柄部に鋭い1対の棘を持っています。
クロハギ属はカラフルでニザダイ科の中でも大型の種類が多いため、水族館で展示される事も多いです。
テングハギ科とは尾柄部の棘で簡単に見分ける事ができます。
ニザダイ属(Prionurus)について
ニザダイ属には7種類が分類されており、日本ではニザダイのみが確認されています。
ほとんどが太平洋に生息しており、1種類のみ大西洋に生息しています。
尾柄部には複数の骨質板があります。
日本では上の写真のニザダイ(Prionurus scalprum)のみが生息しており、尾柄部に黒色の3つの斑点がある事から「サンノジ」と呼ばれる事も多いです。
国内で見られるニザダイ科の魚の中でも分布域が広い事からニザダイ科の中で、ナンヨウハギに次いで2番目に多くの施設で展示されています。
磯釣りの外道として有名な魚です。
ヒレナガハギ属(Zebrasoma)について
ヒレナガハギは7種類が確認されており、日本国内では3種類が確認されています。
ヒレナガハギという名前の通り、大きく発達した背鰭を持っている種類が分類されています。
2匹のヒレナガハギが鰭を広げて威嚇しあう姿。
普段は大きな鰭を畳んだ状態ですが、他の生物を威嚇する際や驚いた際に鰭を大きく広げる習性があります。
キイロハギやイエローテールサージョンフィッシュは観賞魚としても流通しています。
ヒレナガハギを展示している施設は多く、ニザダイ科の中でも4番目に多くの施設で展示されている種類です。
日本で見られる種類はキイロハギ、ゴマハギ、ヒレナガハギの3種類です。
ナンヨウハギ属(Paracanthurus)について
ナンヨウハギ属はナンヨウハギ(Paracanthurus hepatus)1種から構成されています。
ニザダイ科の中でも独特な見た目をした魚で、紫色の体色に黒色の模様があり、尾鰭は黄色になります。
上の写真はナンヨウハギの尾柄部を拡大したものです。
尾柄部には鋭い棘を隠し持っており、普段は見にくい事が多いです。
上の写真はナンヨウハギです。
照明や個体によって体色の見え方が異なり、青紫や青色をしています。
ナンヨウハギはニザダイ科の中で最も知名度が高い魚で、映画「ファイティングポーズ・ニモ」にもドリーのとして出演していました。
観賞魚としても人気の高い種類で、ニザダイ科の中でも最も多くの水族館で展示されています。
ナンヨウハギについての記事は下のリンクになります。
サザナミハギ属(Ctenochaetus)について
サザナミハギ属は世界中で9種類が確認されており、国内では3種類が生息しています。
上の写真はサザナミハギです。
サザナミハギは体側に縦筋がある事が名前の由来となっています。
ニザダイ科の中でも小型種が多い属で、観賞魚として飼育されることもあります。
日本で見られる4種類は(キンリンサザナミハギ、コクテンサザナミハギ、サザナミハギ、メイキュウサザナミハギ)です。
キンリンサザナミハギとメイキュウサザナミハギは小笠原諸島等の南方で見られ、他2種は南日本に分布しています。
ニザダイ科の魚を多く展示している水族館の紹介
私が訪れた事のある水族館の中で、多くのニザダイ科を展示していた施設を紹介します。(ある程度地域が分かれるようにはしています)
葛西臨海水族園(東京都)
葛西臨海水族園は東京都の葛西にある水族館で、都内の施設の中でも非常にリーズナブルな価格設定をされている水族館です。
一番有名なのは水量2,200tの巨大なドーナツ型水槽で展示されているクロマグロ達ですが、他の施設では見られないような世界中のマイナーな生き物を展示している施設としても有名です。
ニザダイ科も非常に多くの種類が展示されており、
上の水槽は世界の海エリアの東シナ海水槽で、5~6種類のニザダイ科の魚が展示されており、特にテングハギ科の魚が多く展示されています。
葛西臨海水族園では他の施設では見られないマイナーな種類を多く展示している水族館で、ニザダイ科も珍しい種類が展示されています。
左側からアカツキハギ、スジクロハギ、ソハールという葛西臨海水族園で展示されているニザダイ科の魚です。
上記の3種類はJAZA加入の施設では葛西臨海水族園でしか見ることができません。(2021年2月時点)
名古屋港水族館(愛知県)
名古屋港水族館は愛知県にある大型の水族館で、美ら海水族館、海遊館に次いで国内で3番目に入館者数が多い施設です。
名古屋港水族館では15種類以上のニザダイ科の魚を展示しており、ほとんどが南館のサンゴ礁大水槽で展示されています。
サンゴ礁大水槽では150種類以上の生き物を展示している水槽で、大型の水槽なので見るたびに違う姿を見ることができる水槽となっています。
南館1Fの半分トンネルになっている場所と南館2Fのウミガメ水槽の対面側の2ヵ所から見ることができ、上の写真のように大水槽側とサンゴ礁水槽側を行き来する事ができます。
鳥羽水族館(三重県)
鳥羽水族館は展示生物の種類数が国内で最も多い施設で、ニザダイ科の魚も多く展示されています。
恐らく国内で最も多くの種類のニザダイ科が展示されている施設で、約30種類が展示されています。
広い施設内で様々な場所でニザダイ科の魚が展示されていますが、掲示パネルがおおざっぱなエントランスホール内に設置されている2つの水槽で展示されていると思われます。
エントランスホールから見れる大型の水槽はコーラルリーフ・ダイビングからも見ることができます。
海に潜ったような感覚になれる展示となっています。
人魚の海エリアでは国内では鳥羽水族館でしか見られないジュゴンと一緒にニザダイ科の魚が展示されています。(ヒレナガハギ、モンツキハギ、キイロハギ、ナンヨウハギが展示されています。)
ヒレナガハギに似ているインディアン・セイルフィンタンは鳥羽水族館でしか展示されていません。(ヒレナガハギとは異なり、尾鰭にも白色の斑点がある事で見分ける事ができます。)
アクアパーク品川にも多くのニザダイ科を1つの水槽で展示しており、非常にオススメですが、掲示パネルがないため今回は除外しました。
おまけ:個人的に好きなニザダイ科の魚
おまけとして個人的にオススメのニザダイ科の魚を紹介していきます。
1位:ヒメテングハギ
個人的に一番好きなニザダイ科の魚は最大種のヒメテングハギです。
ヒメテングハギはテングハギ科の中で最も頭上の突起が長くなる種類で、ニザダイ科の最大種で、最大で1m近くにまで成長するようです。
長く伸びた頭上の突起が目立つ種類で、多くの水族館で展示されています。
太平洋~インド洋に幅広く分布しており、国内では相模湾以南の太平洋沿岸、琉球列島、小笠原諸島などで見られます。
英語では「Whitemargin unicornfish」と呼ばれており、尾鰭の後縁に白色の部分があるのが名前の由来となっています。
2位:パウダーブルータン
パウダーブルータンはインド洋に分布しているクロハギ属の魚で、観賞魚として飼育されることもあります。
ニザダイ科の中でも派手な見た目をした種類で、国内で見られないニザダイ科の中では多くの施設で展示されている姿を見ることができます。
自然界では群れを作る事もありますが、水槽内では同種間で争う場合がある事から、他のニザダイ科とは別に単独で飼育されている事も多いです。
3位:ナンヨウハギ
ナンヨウハギはニザダイ科の中で最も認知されている種類で、観賞魚として飼育されることもあります。
青色と黒色と黄色の3色の派手な見た目をした魚で、 ニザダイ科の中で最も展示施設が多い種類です。
子供にも人気の種類で、水族館ではファイティング・ニモのキャラクター名でもある「ドリー」と呼ばれる事も多い魚です。
地域によって色彩に差異があると言われています。(上の写真のように薄い個体や濃い青色の個体もいます。)
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。